鰯から小肌まで

お寿司は美味しいが、いろいろな人がいるものだ。

実際にいた女性。光物が大好きで、他の高い寿司は嫌い。男にとってはとてもうれしい女性だ。カウンターの端から端まで、光物だけを探して横に流れていく。

貝は食えない イカ刺し無理で

トロは合わない 甘エビ憎い

店が泣く泣く 憐れむように

変な女と いうように

鰯から小肌まで光を追って

横に流れて ゆく女

 

二度も三度も 試した挙句

やはり無理だと 心に決めた

ねたは山盛り カウンター沿いに

移る気持ちを 振り捨てて

鰯から小肌まで光を追って

横に流れて ゆく女

 

洗い娘が 銀座に慣れて

高い寿司屋も 何度も行って

ひとりしみじみ 不幸を感じ

ついてないわと 云いながら

鰯から小肌まで光を追って

横に流れてゆく女

 

北海道男(きたみみちお)作