税金(高額納税者に心からの感謝を)

 最近、納税に関して、色々な意見を聞く。

  • 税金は国にとられるような感覚になるから、出来るだけ払わないようにしたい。
  • 税金を払いたくないので違法すれすれの合法節税、それを指南してくれるのが優秀な税理士先生。
  • 世界的企業の姑息な課税逃れの経営手法は許せない。
  • 毎年税金を納めているのに、税金を納めていない社会的弱者救済ばかりに使われているようで腑に落ちない。
  • サラリーマンは隠しようが無くて不利だ。
  • 税金をまともに納めているのに、ありがたいと思われている感じがしない。

 等など、色々な意見はあるものだが、その意見を整理してみると、税というものをどのように考えているかによって違ってくる。

 残念ながら意見を口に出して言うケースは「税はできれば払いたくない。」「いやいや払っている。」という人が多いようにみえる。

 「いやいや、税を払えることは喜びで誇りだ。」という人もいるのだが、声としてはあまり聞こえてこない。

 

 税に対する理解や納税の意義、大切さの啓蒙はそれなりに行われている。学生や子供の頃から理解してもらう取り組みも行われたりしている。納めた税金が社会のインフラを支え皆の役に立ち、ひいては自分自身の為にもなる。

 私もその通りと思う。

 

 だがどうして税についてはネガティブな声が多いのか? 大人がそうであればいくら教育しても子供にも税に対してネガティブな考えが伝染する。

 もしかして、「納税は国民の義務」という言葉から派生して、徴収側が「義務なんだから当然」「当たり前のことで特別なことではない」という考えに知らず知らずに傾いていることがあって、それが一つの原因となっているのではないか?

 実際の窓口でのやり取りや送られて来る書類の中などは丁寧な言葉遣いも多いが、どちらかと言えばマニュアル定型句のような感じもする。

 納税している人々の気持ちを徴収側がどのようにとらえるか。納税者に対して「義務なのだから当然」ではなく本当の感謝の気持ちを持てるかどうかが問題だ。それは税の使い方にも影響してくるものだ。

 それが、善良な納税者が「当たり前だ」と軽んじられているような感覚を持つ原因のような気がする。

 

 「高額納税者には納税したことによる何らかのメリットを」という声もある。税金還付、減税等の金銭面での優遇をという声だ。

 ちょっと違う。納税者は納税するということは当然と思っているし、正当な税金は正当に払うべきであり減額を望んでいるわけではない。高額納税者の納税額を減額したら、そもそも税収に影響する。本当に納税が必要と思っている人は、いやいや納税している人とは違い、求めているのは人の為、世の為に役にたっているという実感であり金そのもではない。

 

 真面目に納税している人々に社会が本当にその姿勢と行為に感謝をしていることを表すにはどうするか。

 

 かつて企業調査員時代に訪問した事業所には、税務署長からの感謝状などが飾られているところも多数あり、納税に対する感謝の気持ちを表す行為は長年地道にされている。ただそれはその事務所に行って、表彰状に興味を持った人間にしか伝わらない。

 かつて税務署では課税所得1千万円以上の高額所得者を税務署前の公道に面した掲示板で公表していた。その後高額所得者が増えすぎたので納税額1千万円以上の高額納税者の公表に変更したが、住所や納税額までも公表していた。当時の中小企業の経営者などは公表されることを名誉に思い、働くことの励みにしていた人も多い。国が貢献を評価してくれていると思えたからだ。納税の義務を果たした人を評価し感謝して納税意欲を広めるという意味で、評価できる仕組みであった。

 然し時代が変わって現在は、個人情報保護の観点から公表はされていない。プライバシー侵害と犯罪防止(詐欺事件などのターゲットとして使われる危険等)の方が重視されるようになったからだ。

 だが、本来の、納税が評価されることで勤労意欲を向上させるという構図が不必要となったわけでは決してない。

 再び、優良納税者の存在と社会の感謝の気持ちを世に広く知られるようにするにはどうすればよいか。

 

 そこで、提案だが、優良高額納税者への感謝の証として、様々な公的インフラのネーミング権付与を導入してはどうだろう。

 例えば、自治体の所有している道は沢山ある。今は、県道、市道〇〇号線などと表示しているが、高額納税している人の名をつけて、「通称 真柄ストリート」なんてどうだろう。(断っておくが、私は高額納税者ではない。)

 道だけではなく、様々な施設、公園、橋、街路灯等、ネーミングに使えるものはいくらでもある。対象施設が不足するようであれば期間を限定してのネーミング権でも良いだろう。

 子供にとっても、自分のお父さんやお爺さんが一生懸命に働いて皆の役に立ち、感謝されていたんだという誇らしい証になる。この効果は叙勲に匹敵する優良納税者の名誉となるのではないか。

    そして、企業にも適用させた場合は、宣伝効果はかなり大きい。求人面でも大いに役にたつだろう。広告費を使うよりも税金を納めたほうが得になる場合もあるのだ。

 

 もう一つのアイデアとして企業に対する評価と税の関係を紹介してみる。

 その企業単独の納税のみでは本当のその会社の納税による社会貢献評価は出来ない。リストラの方が評価されるケースが多くなる。

 一方、雇用している社員の納税もまた、雇用している企業の納税貢献だ。

    つまり、企業の評価を納税面で行うのであれば、全従業員の所得税納税分と会社の納税額との合算が正しい社会貢献なのではないか。

 そのような評価制度になっていけば、沢山雇用し、給与を弾んでやれば会社の評価が上がるという仕組みになってくる。

 政府がいくら「社員の給与を上げろ!」と圧力をかけても、経済が伸びないための焦りからの短絡的スローガンに見えてならない。経営者にとっては経営に対するの評価の仕組みに結びつかなければ意味は無い。

 今までの欧米制度的な企業評価基準ではなく、日本発の新しい経営評価の概念とそれに伴う仕組みが令和元年に出てくれば嬉しい。

 

 その為には、マイナンバーの普及を急ぎ有効に活用してほしい。消費税も生涯納税にカウントできるようになるのだ。沢山物品を購入する人が高額納税者となる可能性も出てくる。

 

 どうですか? 政治家、税務関係の皆様!

 

2019.5