鵜のパラダイス? 日立市

「鵜飼い」は平安時代から1300年も続く鮎漁の手法の一つ。国の重要無形文化財になっているものもあり、宮内庁式部職の鵜匠によって執り行われるのが長良川などの御料鵜飼だ。
 現在鵜飼いは全国13か所あまりで主に観光用に行われているがコロナ禍においては休止の所も多く、コロナは「鵜」の職場をも奪っている。休業の助成金は鵜まで一律に届いているだろうか。
 鵜飼いの主役は何といっても「鵜」。優秀な鵜匠が何人いても、鵜がいなければ鮎は捕れない。全国13か所で行われている鵜飼いの内、11か所で勤労している「鵜」、それは茨城県日立市の鵜の岬で捕獲される渡りのウミウ(海鵜)である。
 捕獲場所は、日本で最も人気のある国民宿舎で知られる「鵜の岬」の敷地内、大平洋に面した断崖絶壁にある。例年なら捕獲期から外れ一般公開もされている3月であるが、コロナ感染防止のため公開は中止されていた。已む無くつまらない写真のオンパレードになってしまった。
 文献や、紹介ビデオによると捕獲の方法はそれ専用に開発された捕獲用具と共に相当にユニークだ。囮の鵜を岸壁に並べ繋ぎ(他地域で昔行われた捕獲では恐怖心などを取り除く為か囮の鵜は瞼を縫って仮に盲目にしたこともあったらしい。)、休息に集まってきた鵜を後ろの葦簀の小屋(とや)から特性のかぎ型の道具で足を引っかけ小屋に引きずり込むというもの。
 簡単なものではない。長年かけて人々が作り上げた見事な捕獲方法で、日立市では無形民俗文化財として後世に繋げようとしている程の高度な技法なのである。
 のだが、、、、、、、
 鵜にしてみれは交通事故にあったようなもの。いや、囮と知らず仲間と思って近づいたウミウにとっては鷺にあったようなものか。
 「鵜飼い」が古来の伝統漁法であり伝統文化であり、「鵜の捕獲」もまたそれを支える伝統猟法であり伝統文化であるのだが、遠く北の果てから遥かな南へ渡る鵜にとって、途中休もうとした岩場でふいに捕らえられ、罪人のように唐丸籠に入れられて、羽があるのに陸路を運ばれ、ウミウ(海鵜)のプライドが傷つけられるような見知らぬ内陸河川での労働は、大切にされているのかいないのか。
 不意に思いつき、鵜の目になってあちら側から考えてみれば何とも不憫な。
 だが、中には捕獲された時のあの仕打ちなんかすっかり忘れ、もともと自然界での主役であった野生の渡世のウミウが人が作り出した文化の主役になって、食べるものに困らず天敵にも合わず、苦労して長旅をする必要もない。綺麗な若い観光娘や、可愛い子供達が「すご~~~い!」といってキャーキャー言う。「これも悪くないな」と思っている環境順応型もいるかもしれない。 ので、これを「動物虐待」とかいってとやかく騒ぐつもりはないが。
 「鵜のパラダイス」と称して観光PRしていることも 鵜にしてみれば「よく言うよ。」「鵜のみに出来ん。」ということだろう。
 だが日本には「供養」という文化がある。調べてみたら「鵜供養」というのがあるらしい。
 長良川では鵜飼いで働き亡くなったウミウを毎年鵜飼いの終わる時期に鵜塚で鵜匠が供養し、長良川に鵜に関する俳句をしたため俳句流しをしている。「ありがたや、ありがたや」
 もちろんこれも観光の材料の一つになっている。