ブラキストン線

 遠い遠い昔に聞いたことがある「ブラキストン線」。

 確か、小学校か中学校だと思う。

 生まれてから一歩も北海道から外へ足を踏み出したことのなかった少年にとって、北海道と内地の動植物が違うといわれてもピンと来なかった。

 「内地にヒグマはいない。」「ニホンザルの北限は下北半島」程度は、「ああそうなのか」とは思っていたが、授業で習ったことはあったのであろうがそれ以上に踏み込んで考えたことは記憶上はない。

 だが、東京で社会人となって40年以上、その間に、「イタドリ(どんげ)の大きさが違う」「ふきの大きさが違う」「タケノコは細くない」「内地にゴッコはいない」等々、北海道と内地は明らかに違うということは、日常の食事や趣味の釣り、ゴルフで見る林の植生の違い等で理解した。

 その分岐線が津軽海峡である。

 その事実を学術的に証明して提唱したのが英国の動物学者トーマス・ブラキストン。

 その名をとって津軽海峡線ともいわれるこの動物相の分布境界線をブラキストン線と言っている。

 ブラキストンは幕末から明治にかけて滞函し、ブラキストン線の提唱だけではなく、函館の上水道や函館港第一桟橋の設計等函館の発展に大きく貢献したため、彼の没後函館図書館が主催して没後20年祭りが行われるほどに市民から感謝をされている人物だ。

函館の街を見下ろす函館山の山頂には、函館を見下ろすようにブラキストンのレリーフが立っている。

 

 今毎年日本中を旅ができるようになって、改めて北海道の他の地域と違う風土と歴史、そしてポテンシャルを感じている。「北海道は違う」と言ったブラキストンの提唱を、前向きに利用して、北海道に生まれたことに感謝して、今後も胸を張りたい。