消費税と軽減税率

 消費税増税が先送りされるという機運がにわかに盛り上がっている。

良いことだ。なぜなら、「軽減税率」等について考え直す時間が出来るからだ。税についての本質的な議論よりも、人気取りの為の小手先の議論のみで事が運んでしまうことがおそろしいからだ。

 税は公平感ということと、格差の調整機能が重要だと私は考える。そして、国民を前向きに、行動的に導き、日本国に暮らすことのメリットを充分に考える必要があるだろう。

 

 8%に消費税が引き上げられて来年4月の10%への再増税が表明されてから、にわかに軽減税率という議論が始まった。正しく表現すると軽減ではなく据え置き税率だ。今までよりも得するものでは無い。振り返るとこれまで軽減税率論議でどれだけの労力とコストが費やされ、これからを推測するに、システム改修等を含めて日本全国でどれだけ多くの労力とコストが費やされることだろう。その結末がもし、税収が伸びず、増税効果が薄まることにでもなれば社会全体としては踏んだり蹴ったりだ。

 

 消費税を10%に増税するのであれば、その効果を最大にし、国家財政の健全化に寄与させるため、例外なく適用することが必要だ、高所得者との格差が心配なのであれば、かつてのように贅沢税を復活させればよい。贅沢品は品数も少なく徴収も特に複雑とはならないだろう。

 

 それよりも増税と同時に冷え込むであろう消費を下支えするための策を同時に出すことだ。私が考える策の一番手は、インフラコストの低減だ。特に中低所得層が、いろいろなチャンスをつかみ生活不安がない状態にして経済活動を活発に行うためには水道、電気、ガスのインフラ料金、並びに旅や移動に消極的に鳴りがちな交通費の低減だろう。一般家庭や個人の生活に占めるこれらインフラ支出が低下すると、食料を減税する必要性も圧縮できる。

 また、インフラコストの低減は、海外からの投資を呼び込むうえでは絶対的な武器の1つとなる。インフラのメンテナンス能力向上、さらなる環境整備には消費税増税分を使うとよい。

 全額福祉の為という用途限定目的税の概念は、現在でも曖昧になっているように、現実にはあり得ない概念と運用だ。

 

 よしんば軽減税率を導入するとしても(私としては社会的な無駄ともいえる投資を伴う導入はしてほしくない)、対象はインフラと交通費に集中すべきと考える。少なくともそのような選択肢も議論に乗せてもらいたいものだ。

 

 伊勢志摩サミット、参議院選挙後は再び10%導入時期をめぐって世は姦しくなるのだろう。まず一度本質を見直してみよう。

 

 2016.4