北上川源泉を見たか

「匂い優しい白百合の 濡れているよなあの瞳」昭和36年に世に出て以来、日本人の心に宿り続けた名曲である。北上川が岩手、宮城に恵みをもたらす249㎞の東北有数の大河であることはだれもが知っているが、その源泉を見たことがある人は地元の人以外は少ないだろう。盛岡から八戸へ奥州街道を走り、北上町へ入る。奥州街道を川沿いに右に折れると5分ほどで「いわてまち川の駅」という親水公園が現れる。北上川の源泉はこの近くにあるという。大河の源泉といえば相当険しい山奥を想像するが、拍子抜けするほど里の感が強い場所だ。源泉は「弓弭(ゆはす)の泉」といい、川の駅から道を挟んだ北上山御堂観音堂の境内にある。滾々とというよりもたまり水のように見えるほど静かな湧き出しだ。勝手に思い込んでいたのはこちらだが、ちょっとイメージが違った感がある。どちらかといえば「里の鎮守の森の井戸」。御堂境内に住む猫も幸せなのか、どこか穏やか。「北上の 弓弭の泉 里の猫」