ベクトルとモチベーション

 企業経営のテーマとは何か? 売り上げ? 利益? 存続? 拡大?・・・・・・

 目的や手段は会社、経営者によってまちまちだが、それらを実現する上で必要な視点のひとつは「ベクトル」と「モチベーション」についての考え方であろう。

 

 「ベクトル」とは、結果として、社員全員が同じ方向を向いていること。

 「モチベーション」とは役に立っているという実感を得ること、得続けられること。

 この考え方で、経営は大きく変わる。

 

 「今年の目標を皆で必死に達成しよう。」「達成して皆でハワイに行こう。」「達成したらボーナスを出すぞ。」「〇〇部長の為に頑張ろう。」「俺についてこい!」等々、「ベクトル」と「モチベーション」を意識した言い回しは、よく聞く。どれも、それなりに効果はあるのであろうが、そのベースに既述の「ベクトル」と「モチベーション」についての考察を深耕した事実を持っておきたい。

 

「ベクトル」

 社員全体が向かうべき方向性を一致させることはなかなか難しい。「これが目標だ!」「皆が目標を達成する強い会社にしよう。」等というが、人の価値観、社員の考えは千差万別、表面的には理解したような顔をするが、本心では、「私はこちらの方が大切」と思っているケースも多い。「目標」決定や、達成の為の工程つくりに、コンサルや社員のディスカッションを導入することで、ベクトルを合わせようとするケースも最近は目立つ。

 私の考えでは、時の目標の上位の概念への理解が、真に「ベクトル」を合わせるには大切だと思う。その上位の概念とは、会社、職場とは何かという考察にまで行きつく。

 会社とは、単なる営利追及集団ではなく、人が人たる生き方をする為の人生のパフォーマンスステージを与える場所であり、直接的に人生を支える社会的機能であるということ。そして、納税を通じて社会インフラの構築維持に貢献し、人生を間接的に支える社会機能も同時に合わせ持つもの。

 したがって、そこで働く人々は、会社という組織を健全に存続させることが、社会の為に持つべき共通項であり向くべき方向性である。

 「社長のおっしゃること」だけで、みんなが同じ方向を向くわけではない。「社長のおっしゃること」は多様であり、時には理不尽なこと、言葉足らずなことがいっぱいある。

 

「モチベーション」

  「やる気」。

  「金銭的報酬」「誉め言葉」「ご褒美」等々、「やる気」を引き出すための手法は沢山あるが、効果があった現象だけを見て、「やる気を起こすには金だよ。」「誉めてやれば人は伸びる。」という段階だけで結論付けてはいけない。

 お金をもらって、誉め言葉をもらってやる気が出た社員の心の底には何があるのか、それは「役に立つ実感」だ、やる気が出ないのはお金、言葉以上に、自分が役に立っているという実感が感じられないからだ。

 「ベクトル」とかぶってくるところもあるが、企業の健全な存続の為に、自分はどのように役に立っているのか? そして、組織が役に立っていると認識してくれているのか? そこにモチベーションの根本がある。

 役に立つ実感を感じられる組織や仕組み、今流にいえば役に立つ実感の見える化とでも言おうか。それが大切だ。

 

 「俺の為にやれ!」「俺についてこい!飲ましてやるぞ!」という感じで部下を連れまわし、『俺は部下を育てている。』と自慢している上司をよく見る。しかし「俺」はいつまでいるとは限らない。「俺」についていけば、「俺」の器が、部下の成長の限界点。部下も必ずしも納得して従っているわけではない。

 

 日頃社員を鼓舞するに使っていたパワー(言動)には、「ベクトル」「モチベーション」への深い考察がベースにありますか? 単なる先輩からの伝承や、経験則だけの物であったのならば、この機会に考えてみよう。

 

2018.3