虚像日本 障害者雇用の水増し

 複数の省庁の障害者雇用数水増しが発覚した。

 年金問題、文科省の公文書改竄等で鍛えられ大概のことでは驚かなくなっている(まずいことに、怒りもおきなくなってきている)私でも、今回は驚くとともに怒りが沸いた。

 障害者雇用は厚労省が年々その基準を強め、民間では相当な知恵と労力と金銭(時には多額の罰金を払いながら)を費やし過去からの意識改革を行い長い期間努力の末に今日の水準にたどり着いた。今後も求める水準はより高くなることだろうが、企業は努力をするし、すでにさらに先の次元を運用している企業もある。

 ところが、国がそれを無視(かもしれない)し、嘘を言い(水増しとは嘘、信用できない組織を意味する)続けてきた。しかもそれが長年発覚しなかった。仲間であろう厚労省が本当に気付かずにいられるものなののだろうか。企業には立ち入り調査までするのに。

 どのように解決するつもりなのか。障害のある方々にも失礼だ。戦力にならないからと採用しなかったのか。そうであれば、省庁ぐるみ(国家ぐるみ?)の障害者差別といえるだろう。何故なのか、そして今後どうするのか徹底的に明らかにしてもらいたい。

 

 話は変わるが、自ら(国)が決めたことを守らないということで言えば、労働時間に関しても同じだろう。労働時間の一番のブラック企業は省庁ではないだろうか。予算時期や国会開催時の役人(特に資料作成作業を手掛ける下っ端《失礼》)は殺人的だ。今の働き方改革等の是非はともかく、政府が肝入りで時短を推進しているのに、どうして省庁は守らないのだろう。もし、守っているという資料が出てきても、それが本当とはにわかに信じられない。障害者雇用の嘘をみれば。たとえ資料が出ても嘘の疑問は残る。もっとも完全に守るには膨大な税金を投入する必要が出てくるのだが。働き方改革で労働時間時間外上限100時間となった。一般的にはかなり多いと思っていたが、財界の大手社長の要求と同時に、省庁のために設定した上限かと思ってしまう。

 

 日本は規則を守る国、嘘をつかない国、省庁や役人は物事の進むテンポは遅いが嘘や間違いは無い。皆、政府・行政を信用している。だから日本は暴動や犯罪も少なく、勤勉でおもてなしの精神にあふれている。と、勝手に思い込んで来た。

 それがこんにち、省庁の役人について、次々と嘘が表面化してきている。しかもかなり時代をさかのぼる。その上に、それをごまかすためにさらなる嘘をつく。「恥の上塗り」ではなく「嘘の上塗り」。

 それにつられてなのか、同時的になのか民間においても過去から現在へ続くデータの改竄等次から次と嘘が。

 

 日本が素晴らしい国というのは、少なくとも昨今の政治家、省庁、役人、大企業、公的団体の不祥事を見る限り虚像なのだ。そして問題は、当事者がそれが問題だと本当に感じているのか疑問なことだ。

 例えば、行政の効率化、税金の無駄遣いなどの声が大きくなったり、小さくなったりしながら叫ばれ続けている。少し前の事業仕分けについては与野党双方にがっかりしたが、法律を作る人(政治家)、法律を運用する人(行政)に一般市民や財界の求める効率化を期待することは不可能だ。なぜなら、彼らの効率化と一般的な効率化には時間軸とコスト意識が本質的に違うのだ。保身に対する執着心も相当に違う。彼らにとっては言うことと行うことは当たり前に違うのだ。

 残念だが、自らの不誠実や嘘(民間なら民事的犯罪だ)が、国民の疑いの心を育んでいることに心底では気づいていない。

 

 一方、虚像ではなく、日本の(いや人間の)素晴らしい実像を目の当たりにする機会もあって救われる。天皇陛下、皇后陛下が戦争や災害と平和について語るお姿、災害ボランティアの尾畑春夫さん。両陛下や尾畑さんの一言一言と眼力をみると政治家のコメントや原稿の読み上げが虚しく、まさに虚像に見えてくる。

 

 日本には素晴らしいもの、素晴らしい人々、世界が羨むものが多数実像として存在していることは確かだ。行政が手本にして参考とするべきものも多い。

 その素晴らしい日本の実像を政治が実践できなければ、政治は国民からも日本大好きな外国の人々からも乖離していくだろう。もう大きく乖離してきている。気付け政治家。

 

 残念ながら、今の政界には本当の意味での創業政治家がいなくなってしまった。現在では2世、3世の政治家が中枢を仕切る。企業でもそうだが、2世、3世で創業者のように腹に落ちた創業の精神を実践できる人は少ない(ほとんどいないといって良いか)。創業者は実際に日本の素晴らしいものに触れ心が同化して起業している。創業政治家のその志は2世、3世が及ぶ次元ではない。いでよ、平成以降の若手創業政治家! ベテラン政治家の皆さん、自分の器に国家をとどめるな。今の虚像は皆さんの器が作った結果なのだ。「政治家は結果が全て」と誰かが言っていた。

 

2018.8