六日目 「タラ鍋」に救われて

自由市場 靴修理で手回しミシンを使う店主
自由市場 靴修理で手回しミシンを使う店主

 五度目の朝食、豆腐みたいとベーコンを中心にアリーナのいない朝食を摂る。

 

市内観光開始までWGCブリジストン招待を観戦。松山英樹は連日の67(-3)でトータル -7優勝の期待が膨らむ。

 

10:00ロビー集合、昨日下見をした自由市場へ行ってみる。今日は真剣にお土産を探すことにする。

今日は日曜日、レーニン広場周辺から自由市場にかけて人通りがかなり多い。

市場の路上で茹でトウモロコシを売っている店が何件かあるが、こちらでは茹でトウモロコシに砂糖をまぶして食べるらしく、グラニュー糖が置いてある。買った客はビニールの袋に茹でキビと砂糖を入れ振ってまぶしている。昨日は出ていなかったが、靴の修理屋が出ていた。年季の入った手回しミシンを器用に使って革をぬう。珍しいので皆がカメラを向けるが「撮るな!あっちへ行け!」というように怖い顔で睨む。

新しく大きなショッピングビルに入ってみた。地下がスーパーマーケット、一階と二階がショップ。三階が遊技場とフードコートになっている。明るく見晴らしがよくトイレも清潔だ。皆でコカ・コーラで一休み。フードコートに「ラーメン一番」と日本語の看板の店がある。店頭のメニュー写真を見る限り、まさにラーメンだ。

 

自由市場は鉄道を挟んで拡がっている。踏切を渡って反対側のブロックへ行ってみることとした、その時、踏切の警報音が鳴り遮断機が降りてきた。遮断機は踏切番が捜査している。列車を待つこと数分、なかなか列車が来ない。すると、車はもちろん遮断機の前で止まっているが、人は踏切番の目の前を平気で渡って行く。それどころか、線路そのものを道のように歩いている人もいる。日本ではローカル線でもあまりみられない光景だ。

しばらくたってようやく列車が来た。「あれ?」あれだけ待って機関車一両のみ、拍子抜けする。

衣料中心のお店が並ぶ一角を抜けいくつかのショッピングビルに入ってみるが、どれも店内が暗い。家具屋やベビー用品等何でもあるが、お土産となるとちょっと弱い。

お昼になったので、先ほど見た「ラーメン一番」へ行ってみることにした。ラーメン、チャーハン、餃子、カツ、カレーライス、なんでもござれのラーメン屋だ。はたして、日本みたいなのか日本なのか。

最もシンプルな醤油ラーメンを注文してみた300ルーブル(約600円)。店員は日本語は話さないが、こちらで注文の際に言う日本語はわかるようだ。比較的待たずにラーメンが出来上がる。先に同じ醤油ラーメンを食べていたMTさんに尋ねてみる。

「どうですか?」

「うーん、なんとも言えんね。まあ美味しいよ。」

出汁をすすってみる。少し甘めだが、問題は無い。チャーシュー、茹で卵、海苔、葱がのった本格的ラーメンだ。麺は・・・・・・似て非なるもの。日本みたい。太めの蕎麦のようなで延びやすい。見ると、MTさん麺を残した。

 

土産にふさわしいものが見当たらないため、MTさん、UNさん、MGは二日目に行った土産店ゲルメスへ向かった。(OZさん、MSさん、NOさんホテルに戻って休息をとる。)

自由市場からサハリーンスカヤ通りを東へガガーリン公園方面へ向かう。この道も、いたるところ歩道のメンテナンス工事中。日曜日なので休工中だが、コーンなどで囲っていないので危ない。ゲルメスで買い物を済ませホテルへ帰る道すがら、大きなログハウスづくりしゃれたホテルを発見。「BELKA ホテル」 温泉、サウナと書いてある。海外の旅では日本と違いどこでも温泉に入るということは出来ない。一度入浴してみたかった。次回の為の心残りが出来た。

「ふる里」VIPルーム ゴルバチョフ等の要人が訪れた。
「ふる里」VIPルーム ゴルバチョフ等の要人が訪れた。

夕方18時ロビー集合、「ふる里」へ向かう。

宮西さんに迎えていただき、VIPルームへ通される。

ロシア国旗、サハリン州旗、ユジノサハリンスク市旗が掲げられた清潔な個室である。約束の「タラ鍋」の準備をしていただきながら、宮西さんと昨日の話の続きに花が咲く。

「ロシアの花咲じじい」こと宮下さん。日本領時代に持ち込まれ樺太を彩った桜の木々は、ソ連時代には敵国の花木として伐採された。日本の神社やロシア正教の教会まで取り壊された時代である。その桜を復活させようとの宮西さんの熱意がロシア政府を動かし、困難な交渉の上、再び日本の桜がサハリンを彩るようになった。現在では、ガガーリン公園、レーニン広場で市民の目を楽しませている。この桜は、モスクワの桜公園にも植えられている。

 

宮西さんは、札幌刑務所篤志面接委員として50年以上も音楽教育などの活動を行っていることでも有名である。

作曲家としての宮西さん、作品は、代表作「函館ブルース」「十勝川」以外にも「盛り場小唄」「雨の匂い」「ネオン灯台」「洞爺湖の誓い」「留萌の夜」「台北慕情」等々数多い。

 

「タラ鍋」が完成し運ばれてくる。薄めのしょうゆ味にほくほくしたタラの白身が抜群に美味い。異国でこのような味に会えるとは。救われた。ここまでくるとペンギン欠航に感謝の念まで湧いてくる。タラ鍋とヴォッカのコンピネーションも秀逸、あっという間に鍋は空になる。

「函館ブルース」は小野由紀子の唄が有名だが、OZが「春日八郎も歌っているんですよ。」とUチューブを見せると、宮西さんはご存じなかったようでびっくり!

「春日先生が歌ってくださったのですか 感激です。ありがたい!」

ロシアの制度下でロシア人を使う飲食店の開店や経営の難しさ、昨日に続いてMTさんとの芸能界の思い出話も盛り上がる等、ランダムに色々な話題が飛び出してあっという間に時間が過ぎた。

良かったあ!

 

支払いを済ませて、店を出る。店の外まで見送りに出てくれた宮西さん、我々が角を曲がって見えなくなるまで、手を振り、お辞儀をして見送って下さる。丁寧な方だ。

ロシアに住む日本人は2100人ほど、うちサハリン在住は100人弱、ビジネスでサハリンを訪れる人は月60人程と聞く。これらの人々には「ふる里」はまさに「ふる里」だ。

 

「ふる里」の余韻をホテルのバーで楽しむ。これがサハリン最後の夜のはずである。心のどこかに「また海が荒れたらどうしよう。」という不安を抱えながら、ヴォッカ、コーラ、巨大なケーキを、やっとの思いでウェイターに理解させ注文。やけに暗い店内なのでだんだん眠くなった。明日の船に備えて、ぐっすり寝よう。 六日目 完!