金が無いひもじさは、親元を離れまだ自分で稼ぐ能力もなく都会をさまよっていた時には身に染みた。僅かな小銭を握りしめ、「あと何日」とこらえた日々が、あったなあ。
ここで一丁買ったら良いと
すがる涙の豆腐売り
その場限りの おべんちゃら言って
冷やかし一人旅
後ろで落ち込む売り子の声を
背で断ち切る カラッケツ
生きていたなら いつかは買える
がんもも買えるだろう
買いたい気持ちに 逆らいながら
試食を探す胸の内
隣の店の 螺焼きみつめて
冷やかし一人旅
付けの真柄か夜逃げの秀明
その日で呼び名は違うけど
カネが無くてもいつかは食える
只でも食えるだろう
たとえどんなに売るよといわれても
たとえどんなにおつりが欲しくても
お前が俺には最後の小銭
俺にはお前が最後の小銭
たとえどんなに安いといわれても
お前が俺には最後の小銭
たとえどんなによだれが流れても
お前が俺には最後の小銭
北海道男(きたみみちお)