JR北海道が苦戦だ。廃線、廃止駅の計画が相次ぐ。企業存続のためには脱鉄道を進める以外にないようだ。所有敷地は広大だが、過疎地域に広がる資産では不動産業としても多くは見込めない。数年後のJR北海道のイメージが浮かばない。
そもそも、鉄道事業は一般的営利事業と同等にみるべきものなのだろうか? 確かに、過去公的インフラはずさんな経営の時期があったことも確かで、それが為に公社が分割民営化され、それぞれの企業が成功した事実もあるが、一方「経済は人口」の通りに事業活動は都市部に集中し、公社が持っていた本来的な全国的なインフラ維持は企業目的の中でランクが下げられてしまっていることも確かだ。
これは全てが企業の儲け最重視の経営の為、廃線は企業戦争の中での敗戦の結果だ。
一方、鉄道の持つ機能を国防の観点から考えてみるとどのように見えて来るだろうか。
聞けば、宗谷本線の北部(名寄⇆稚内 183㎞)も廃線検討の俎上にあがっているという。稚内ノシャップ岬近くには自衛隊稚内分屯地(海上自衛隊は稚内基地)がある。実力部隊は展開せず、通信傍受や船舶監視が任務だ。ロシアだけを想定しているわけではない。国家として国土を防衛するには、都市部はもちろん、むしろ過疎の海岸線をいかに防衛するか、言い換えると有事の際いかに大量の戦力を前線(国境海岸線)に迅速に展開するかが最重要ポイントになる。
現時点で最も近く実行部隊が存在するのは名寄基地である。なんと、183キロメートル離れているのだ。自動車では、ノンストップで3時間以上。しかも、輸送力は鉄道よりはるかに劣る。有事の際は実行部隊がおっとり刀で183㎞を駆けつけるのだ。近代戦で3時間のロスは大きい。最適は実行部隊の稚内駐屯だが、少なくとも鉄道による大量輸送能力は確保すべきだ。
4か国と海を隔てて対峙する日本海側を見ても、古くは瀬棚線、少し前では江差線、増毛線に続いて将来は留萌線と廃線の波は納まりそうもない。
過疎が先か廃線が先か。過疎が進みすぎてかつて程は廃線→過疎の進行は無いかもしれないが、廃線が過疎と隣り合わせであることは間違いない。
海岸線の過疎は、国境海岸線の監視能力、情報収集能力を衰退させる。
廃線は本当の有事の際の敗戦要因の一つになるかも。その責任は民間営利企業JR北海道が担うべき範疇には無い。
そもそも、あらゆる部分が内地とは異なるのだ。JR東日本、JR東海等と同一ルールでの評価自体に無理がある存在がJR北海道なのだ。1987年の民営化から30年。新しい視点で鉄道事業を見直し、むしろ北海道が世界に誇る鉄道大陸になるような夢のような時代は来ないだろうか。
2017.2