昭和日本に生まれて良かったと思うことは多々あるが、その中でも最たるものの一つが、ザ・ピーナッツと同じ時代に生きたことだ。1959年から1975年は日本の歌謡界が新しい次元に到達した時代だ。
数年前にサハリン(樺太)を訪れた時、ガガーリン公園の野外ステージでわれわれを見つけたバンドグループが急遽演奏してくれたのが「恋のバカンス」だった。
ユーチューブを探してみると、沢山の新旧アーティストが「恋のバカンス」を歌っている。ロシアにおいては「恋のバカンス」は世界で日本を代表する曲の一つなのだ。
戦後島倉千代子や橋幸夫等新旧混在の価値観での昭和歌謡が流行っていた時代、さらに時代を先取りするような和製ポップスの草分けであったのがザ・ピーナッツ。
「可愛い花」「情熱の花」「振り向かないで」今から60年も前に突如始まった新しい世界。その才能は、和製ポップスにとどまらない。民謡から童謡、歌謡曲は当然ながらジャズもドイツ音楽もカンツォーネもシャンソンもラテン音楽さえ全般にこなし、しかも素晴らしいハーモニーはもとより各言語を完ぺきに歌う。
エドサリバンショーでの「恋人よ我に返れ」、ドイツでの公演VTRは何度見ても素晴らしい。
これまで、ザ・ピーナッツの歌はほとんど聞いているつもりだが、今でもなお、初めて聞く音源に当たることがある。「こんな歌まで唄っていたのか。唄えるのか。」そのたびに感心すると同時に宝物を発見した気分になる。
洗練されたファッション、「情熱の砂嵐」のような上品で格好いいダンス、そもそもそれぞれが唄が旨いうえに、双子とはいえ完ぺきを超えるハーモニー、このようなアーティストはこの世に二度と出ないだろう。
奇跡のハーモニー、それは宝声だ。
今では、エミさんユミさん二人とも天上人だ。引退後は色々とあったことだろう。そこにはふれたくないし見たくもない。ただ最後までお互いを思う仲の良い双子の姉妹であったことは間違いない。
ザ・ピーナツと同じ時代を生きた人々は幸せだ。ザ・ピーナツを知らない世代は人生で最高の経験の一つが欠けている、気の毒だ。
今日は何を聴こうか?
・・・・・「ロンリー香港」にしよう。
(追) 世のお母さま方、娘さんが生まれたら小さいうちからザ・ピーナッツの歌をお聞かせなさい。彼女達の歌を真似ると必ず唄は上手になることでしょう。
2018.11