これまでも「言わせてもらえば」の各テーマの中でリスクに関連する記述はいくつかあるが、新型コロナウィルスが世界で猛威を奮っている今、講演で最も多く使っているテーマについて発信したい。
「新型コロナが教える自立」を発信した理由と同様、新型コロナの終息と同時にリスクに対しての関心も希薄してしまうことを懸念して。
「リスク」には大小細々、人それぞれ、会社それぞれ、場面それぞれで多数のパターンが存在するが、一言で本質をいえば「健全な存続を阻害する要因」である。
動物も人も企業も自治体も国家も地球も、あえて言えばウィルスも、各々自分のしたいことを継続するには自らが存続し続けることが絶対的な条件だ。そして、永く生き続けるための前提は、常に状態を健全にしておくこと、生きるということは「健全な存続を阻害する要因」である「リスク」を上手に泳ぐこと。
このテーマは、リスク、リスクと単に不安を煽っているのではなく、安心を自ら担保すること、社会や自分を客観的に知ること、そして想像力というものが大切であるということを言いたいがためである。
「リスク」を克服してひっくり返すと「クスリ(薬)」になるからだ。
現実に行われている「リスク」への対応方法は個別に言えば無数のパターンがあるが、大切なことは本質を抑えているかどうかだ。
①リスクは遠くで把握する
「風が吹いたら桶屋が儲かる」見事なリスクマネジメントの本質だ
・地理的、ジャンル的に遠くで把握する
今回の新型コロナウィルス、まだ武漢のみの発生がちらほら漏れてきた時点でどれだけの人間が自らのリスクとして把握できていたか。日本もそうだろうが欧米等は特に海の向こうの話しとかたずけてはいなかったか。
もっと言えば、SARS、MERSが発生した時に自らの「リスク」ととらえた人はどれだけいただろうか。それらのワクチンや特効薬はまだ開発されていないとも聞く。(定かではない)
幸いにして日本では大流行は無かったが、今でも注視しておくべき「リスク」ではある。
企業倒産などでは、違う業種だから、取引先のない地域の話しだからと高を括っていたが実は影響があったという場合が少なくない。
事実は多少把握していても「リスク」として把握しているケースは少ない。
・時間的に遠くで把握する
「今になって思えば●●年前のあの時のことが・・・・」ということは多々あるだろう。その時点では事実は把握していてもリスクとしては把握していなかったという証明の言い回しだ。
長いスパーンで考えると、大昔の地震を歴史的事実とは把握していても、どれだけの人々が今の現実の「リスク」として把握しているであろうか。
②リスクには近付くな
「リスクは遠くで把握する」が出来ていれば、出来るだけ近づかないように注意し対処する余裕が生まれる。「リスク」としての把握が甘いと、結果として「リスク」に近づいてしまったりする。
あまりにも小さなたとえ話だが、部屋を賃借してみたら隣が暴力団事務所だったとか。
③リスクから逃げるな
「リスク」には近付かないのが一番なのだが、近付きすぎてしまった場合は、今度は逃げないことだ。どこかの時点で「リスク」とは真正面に立ち向かわなければならない。
リスクから逃げよう逃げようとすると、どうしても「リスク」にしっかり向き合わず、その「リスク」の本当の姿を理解せずに行動することとなる。
そういった場合、「リスク」はかえって対処しきれない雪だるまのように大きくなって襲ってくることも多い。
記者会見で責め立てるマスコミを見ているとよくわかる。逃げていると追及は終わらない。「記憶が飛んだ日」のように。
④リスクは起こすな
「リスク」の種は何処に存在するか。それはあらゆる所に潜んでいる。自分とは関係ないところにばかりあるのではない。自国にも、自分の組織にも、部署にも、家庭にも、そして自分自身の中にも多くの種は潜んでいる。
病気にならない人はいないだろう。トラブルのない組織は無いだろう。問題を抱えていない国家はあり得ない。
しかし種には芽を出しやすい種、出しにくい種、特別の刺激が無ければ芽を出さない種がある。
芽を出しにくい種はあえて芽吹かせずそのままに眠らせておけ。
「リスク」の種が内部にある方が自然なのだ。
組織を全部理想的で潔癖なものにしようとしてかえって必要のないトラブルを招いてしまうこともある。その場合は潔癖を求める姿勢そのものが「リスク」であったかもしれないが。
種を評価することはより深く自分自身を知ること、見詰める鍛錬が重要だということが理解していただけると思う。
⑤想像力を磨け
推測、分析を得意とする優秀なアナリストは世界に多々いる。ビッグデータ、AIの時代、過去のデータに基づいての分析、将来予測はますます完ぺきになっていくだろう。
企業の財務を中心としたリスク分析などは今やかなり高度に発展している。
然し、究極のリスクマネジメント、あり得ないことが起こる時代のリスクマネジメントで最も必要なのは想像力の鍛錬だ。
例えば、「アマゾンの蚤のおなら」から「人類再び月へ」と結びつくロジックを想像してみてください。私も思いつきなので、今回答はありませんが、皆さんチャレンジしてみてください。何種類の物語が生まれるのか楽しみです。
ただ、この想像力が窮地や閉塞に陥った世界を打開するのに必要な重要な能力の一つなのです。
想像力が無ければ「リスク」を遠くで把握することも、眠らせておくことも出来ません。
極々基本的な概念部分での「リスクマネジメント」講座でした。
自身の「健全な存続」に何が必要か、何を開始すべきか、暫く自粛で考える時間ができた今を有効に使いましょう。
人間には財政的に裕福な人にも貧しい人にも、共通に与えられている無料の財産がある。
「眠る(睡眠)」
「息をする(呼吸)」
「考える(思考)」
考えることにお金はかからない。いつでもどこでも自由に考えることが出来るということが人類に平等に与えられた財産であり、それを有効に使った偉人が歴史を創ってきたのだ。
2020.3