有福温泉(柿本人麻呂夫婦入浴の温泉)

島根の江津 歌人柿本人麻呂が石見国司として赴任、女流歌人の依羅娘子を妻に娶り、没するまで度々入湯したとされる山間の温泉場。

開湯は7世紀といわれ極めて古い。温泉街の坂道と道の細さが歴史を感じさせる。明治、大正には沢山の芸者さんもいて、かなりの賑わいであったようだ。狭い温泉街に当時としては高価な自動車で多くの客が乗り付ける写真も残っている。湯の肌触りは、道後温泉の湯を思わせるような滑らかさ。

なんといっても気軽に日帰り入浴ができる脱衣所と浴槽だけのような公衆浴場施設が狭い温泉街に何件もあるのが魅力だ。はしご湯をしたくなる。

私のおすすめは「御前湯」大正から昭和初期を思わせる建物で入り口すぐの番台も風情あり。

 

「有福の いで湯浴みつつ 人麻呂の 妻のおとめの としをぞおもふ」

斎藤茂吉さん同感! 娘子ちゃん! どんなんかなあ。

 

温泉入り口の古い土産屋の食堂で蕎麦を手繰りながら、地元のおじいちゃんおばあちゃんの会話に聞き耳を立てるのも楽しい。煙草をスパスパ(温泉なので)吸いながら、熱心に健康の話を論じていて滑稽だ。