あおの競演(青、蒼、紺、藍、緑、・・・・・)

 グアム? ハワイ? セイシェル? タヒチ? 沖縄? 宮古島?

 北国の 夏の海には人知れず 心を揺さぶる「あお」がひろがる。

 国道228号線を上ノ国から松前へ辿る。

奇岩

 旅の始まりは上ノ国の道の駅「もんじゅ」。

   市街地の南外れに位置する「もんじゅ」を出発してから間も無く、面白い岩に出会う。名前はあるのだろうか? ワニのようでもあり、長い甲羅の亀のようでもあり、恐竜といったほうが合っているのか。

  渡島半島の日本海側には奇岩が多い。特に北部の乙部町以北は奇岩が連なっているが、南部にはあまり多くはなく、唯一と言ってい

いほどの一風変わった岩だ。

   


間もなく道は浜から離れ見晴らしの良い高台を走るようになる。

   そこからは、矢立橋、初神大橋、小砂子橋、滝の澗橋・・・大小十数橋が連続、

夫々が、陸側は視界全体が自然林の山、「この山の向こうは、きっと山だろう」と思わせるほど深い山、そして緑に覆われた澤がチラチラ見える。海側は深い渓谷とその先に海が広がる眺望が繰り返し続く。

 あまりの見事さに、一つ一つの橋のたもとで車を降り、徒歩で全ての橋を渡りたくなる。

走りすぎてしまうのはもったいない。


 深緑の山から続く緑に覆われた渓谷が、跨いだ橋をくぐり流れ入る河口からは、浜に砕ける波の白帯を挟んで、エメラルドグリーンの海が始まる。沖に向かって青、蒼、紺碧、藍と続き、地平線から青い空に同化する。このあおの競演を見よ!


 橋を渡るたびに繰り返されるあおの競演を楽しみながら南下していくと、途中から「俺もかでて(「仲間に入れて」の方言)」とばかりに、渡島小島(松前小島)が沖に立つ。北海道の最北端は宗谷岬、最東端は納沙布岬、では北海道の最南端は何処か? 松前ー福島間の白神岬?ではない! 渡島小島こそ最南端。しかしながら保護地域のため、通常旅人は上陸が出来ない。ちなみに、北海道最西端は渡島小島の西北西にある火山島の渡島大島だ。小島と同様保護地域につき通常は上陸できない。

 2017年、この渡島小島で事件があった。渡島小島にはかつては漁民が住んでいたが今は居住者はいない。しかし無人ながら、荒天時の漁船の避難港として使用され、避難時に居住し続けられる施設も用意されている。同年11月の荒れた日本海、北海道渡島半島松前町の陸地から22キロほどしか離れていないこの無人島に北朝鮮の船舶が上陸(避難なのか意図的なのか)し、島内施設の発電機や日用品などを窃盗略奪し破壊行為に及んで逮捕された。

 函館港への曳航途中に逃走を企てたこともあって暫くマスコミを賑わせた事件、まだ記憶に新しい方もいることだろう。この海が政治的に必ずしも平穏な海ではないことを今更ながら思い知らされた事件だ。

  やがて、渡島小島も視界から消えて、このおすすめルートの終点は北前船で有名な福山埠頭跡。岩場に穴を掘り、石柱を並べたかなり立派な埠頭跡だ。津軽海峡の荒波にもまれ、今では相当に崩れて乱杭歯のようになっているが、当時の港湾土木技術の水準をうかがい知ることが出来る。そのような歴史の臭う波止場のあおも良い。江差追分に歌われた蝦夷地とはこの埠頭と福山城(松前城)、そして波路はるかに見えた、大千軒岳のことであったのだろう。

北前船で賑わった福山埠頭跡
北前船で賑わった福山埠頭跡
埠頭の先端
埠頭の先端
ごらんあれが竜飛岬♫
ごらんあれが竜飛岬♫
松前城
松前城

  旅の疲れを道の駅「北前船 松前」で癒す。松前温泉や矢野旅館のお風呂も良い。

  夜は、潮騒を聞き津軽半島竜飛崎の灯りとイカ釣り船の漁火を眺め、闇の中の鴎の声を子守歌に寝る。満足度は高い。

 

夏の北海道、ルート228は外せない。